FC2ブログ
97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
歌舞伎座「十二月大歌舞伎」、夜の部
先週日曜日は歌舞伎座、「十二月大歌舞伎」、夜の部に。昼の部は壱太郎が、玉三郎の監修で「お染の七役」に挑む。そしてこの夜の部は、梅枝、児太郎が、玉三郎の教えを受けて「阿古屋」に挑む。玉三郎が若手女形を鍛える月間。

20181211222700c44.jpeg 20181211222858ed2.jpeg

夜の部の最初は、「壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)」、すなわち「阿古屋」。

玉三郎が遊君阿古屋を演じるAプロと、梅枝、児太郎が交代で阿古屋を演じるBプロの日程に分かれており、この日は児太郎が阿古屋を演じる日。

2017年歌舞伎座「芸術祭十月大歌舞伎」で出た「「秋の色種(あきのいろくさ)」。 玉三郎に従えられて踊る梅枝と児太郎が、まず二人で琴を弾いた。「玉三郎に厳しく鍛えて貰って、いつかは阿古屋を伝授して貰えたらよいね」とblogに書いたが、こんなに早く実現するとは。

筋書に「阿古屋」は「女形の大役」とあるが、昭和の初期から平成まで、歌舞伎座での興行で阿古屋を務めたのは、六世歌右衛門と玉三郎のたった2人のみ。琴、三味線、胡弓を舞台で弾きこなし同時に唄うという、かなりケレンの効いた「特異」な役とも言える。楽器演奏の蓄積が無ければ誰にでもできる役ではない。

玉三郎の阿古屋は、2015年の10月に歌舞伎座で観た。今回は、梅枝、児太郎が志願して玉三郎が伝授する場を歌舞伎座の興行として設けたという印象的な興行。

席は1階A3ブロックの3列目。演奏している阿古屋が真ん前に見える迫力あるポジション。

花道からの阿古屋の出。児太郎は華やかで気品ある登場。 裁きの場に出ての「琴責め」。 嘘をついていれば楽器の演奏に乱れが出るだろうという詮議方法は、いわゆるポリグラフ、うそ発見器の原理ですな。

児太郎「阿古屋」は大健闘して、大きな破綻なくやり終えたのに感心。琴や三味線のリズム感はなかなか良い。三味線や胡弓はギターと違いフレットがないから音階を取るのはなかなか大変だろう。独奏ならよいが、伴奏の楽器があるから、微妙な音階のずれも結構目立つ。もちろんプロの演者ではないので危ういバランスの所もあったように思うが、それでも児太郎の「阿古屋」としてきちんと成立している。演技についても、詮議を逃れるというよりも、愛する男の行方を自らも知らないという呆然とした哀しみも伝わってくる良い出来。

玉三郎が岩永左衛門役で同じ舞台に立って見守っているというのは、児太郎にとっては心強くもあり、緊張もする状況。玉三郎が赤っ面の悪人に扮するのも珍しいが、この容貌が怪異で、これが玉三郎かとびっくり。人形浄瑠璃を模した「人形振り」で演じる面白い役だが、ベリベリした、いかにも人形という大きな動きは無く、動作が心なしか控えめで柔らかいように感じるのはこちらが女形を投影して見ている故か。玉三郎が演じるAプロでは松緑が演じるようなので後日比較してみよう。彦三郎は、同情深く理性的な裁き役、重忠を楷書の輪郭で明快に演じて印象的。

最後の場面、疑いが晴れ放免となり、阿古屋が立ち上がりきまった絶妙のタイミングで三階席から子供の声で「なりこまや~!」と声がかかり、客席がどっと沸いた後は暖かい万雷の拍手が長く続いた。あのちびっこ大向うはいったい誰だったのだろう(笑)

伸び盛りの若手が玉三郎の胸を借りて果敢に挑戦した大役「阿古屋」は、今後の歌舞伎人生にとって貴重な財産になるだろう。

201812112235085ba.jpeg

ここで30分の幕間。花篭で「おでん御膳」で一杯。珍しいメニューなので頼んでみたが、見る限りでは他に頼んでいる客無し。やはり幕間は弁当系か。しかしこのおでんは土鍋で温度も保たれており、出汁もなかなか旨かった。

次の演目は「あんまと泥棒(あんまとどろぼう)」

元々はラジオドラマで、出来が良いのに感心した十七世勘三郎が新作歌舞伎として歌舞伎にかけたのだそうである。中車はあんま役だが、歌舞伎での汚い親父役は任せとけというくらいに掌中のもの。達者で滑稽な演技に客席が沸く。泥棒役の松緑も軽妙なやり取り。悪人に徹しきれない人の好さはきっとニンにあるのだろう。完成された台詞劇を舞台で面白く見せた。深みは無いが良く出来た小品の喜劇。

最後は、新作歌舞伎舞踊、「傾城雪吉原(けいせいゆきのよしわら)」。Aプロで玉三郎が「阿古屋」をやる場合には、梅枝と児太郎の「二人藤娘」がかかるのだが、Bプロでは玉三郎の舞踊。

紗になった幕の向う、ひな壇に長唄連中が並ぶ。雪が降りしきる吉原の怜悧な冬の景色の中、幻想的かつ優美に絢爛たる衣装をまとって傾城玉三郎が舞う。小品ではあるが実に美しい幽玄の舞踊。玉三郎は相変わらず美しい。

何の事情かは知らねど、歌舞伎座夜の部打ち出しが8時前というのは、早く帰れて日曜には特に良いのだった(笑)


関連記事
スポンサーサイト



コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する