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97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
歌舞伎座「三月大歌舞伎」、夜の部
土曜日は歌舞伎座「三月大歌舞伎」夜の部。仁左衛門の「盛綱陣屋」に高麗屋、澤瀉屋の「弁天娘女男白浪」。子役では中村屋の貫太郎、音羽屋の眞秀も出演。

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最初は仁左衛門の、近江源氏先陣館、「盛綱陣屋」。人形浄瑠璃由来の時代物。

イヤホンガイドは、モデルになった徳川の時代や背景としての大阪夏の陣や、それに関わる実在の人物を熱心に解説するのだが、必ずしも史実の通りの物語ではないし、逆に物語の興を削ぐような気もするのだが。兄と弟が違う主君に仕えて敵と味方に分かれているという設定だけ理解しておけば、舞台を見るには十分。

敵方である盛綱の弟、知将高綱の一子小四郎が生け捕りにされた所から物語は始まる。左團次の和田兵衛秀盛は花道から派手な登場で貫禄十分。大詰めでもまた威風堂々の登場で、盛綱といずれ戦場で会おう、「さらばさらば」とやるおいしい役だ。

盛綱の主君である北条時政は、小四郎を利用しようとしているが、実子を助けようと弟の高綱が寝返っては、弟の忠義が立たず武将の家としての面目も立たない。秀太郎演じる母親の微妙に、小四郎に自害するよう説得してくれ盛綱が説く場面は、人間の自然な情愛に対立する「武士の世の忠義」に否応なしに従わねばならない、戦国の人間の悲劇を印象的に描く。クライマックスの首実検についてもまた然り。

自らの主君、北條時政が、弟高綱の首を持って陣屋に現れる。首実検で(歌舞伎の首実検はみんなそうだが)他人の首と知った時の驚きと訝しさ。弟の智謀を思い出して、「そうか、策略を仕掛けおったわい」という得心。しかしふと横を見ると高綱の一子小四郎が腹を切り死にかけている。これは一体、という狼狽から、自らの子供を犠牲にして偽首を本物だと思わせる高綱の計画を判じる。ここまで弟がやるのであれば、自分も主君を欺かねばならないと決めた覚悟。

ここまでの息を飲む心の様々な動きを、主君の疑心の目を背中に抱えながら、仁左衛門が圧巻の無言劇で見せる。映画で言えばクライマックスのワンショット撮影のような場面。「盛綱陣屋」は以前、芝翫で観た首実検は、あんまり印象に残っていないのだが。

高綱一子小四郎は台詞の多い大役だが、中村勘太郎が実に立派に演じた。盛綱一子小三郎のほうは音羽屋の眞秀。子役の健気さを見る舞台でもある。微妙の秀太郎も良い。

高綱の首であったかと喜んで、褒美として与えた鎧櫃に、実は間者が潜んでいたという奸計の大詰めも、容易に人を信じない北条時政の狸ぶりを示す印象深いエピソード。狸時政は歌六が堂々たる風格。

ここで幕間。芝居御膳。空豆、白魚、イイダコ。もう弁当のあちこちに春の雰囲気あり。

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次の舞踊劇は、「雷船頭(かみなりせんどう)」

奇数日は猿之助が女船頭。猿之助は、艶っぽい江戸の女を演じるのも得意だ。大川端が舞台。空がいきなり掻き曇って雨になると、空から雷神が落ちてきたという想定で、女船頭と雷が、二人で軽妙に踊る。偶数日は幸四郎が立ち役で船頭を演じるらしい。まあ両方観たいというほどのものでもないか。


最後の演目は、河竹黙阿弥作、「弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)」

浜松屋店先の名場面の後は、すぐ勢揃いで恰好良く終わる。

この日は奇数日で、弁天小僧は幸四郎、南郷力丸が猿弥。偶数日は、弁天小僧が猿之助、南郷力丸が幸四郎。幸四郎が弁天小僧というのも珍しいし、猿之助の弁天小僧も一度は見てみたいものだが、いかんいかん、3月は大相撲大阪場所もあって遠征するので、夜の部を二度見る余裕はないのだった。危うく松竹の策略にはまる所であった。

浜松屋の場。男だと見破られた後の弁天小僧の有名な啖呵。花道でどちらが荷物を持つかで揉める「坊主代わり」も気楽で面白い場面。

日本駄右衛門は白鸚が貫禄で務めるが、他の白波五人衆は若い世代。花道の渡り台詞、勢揃いの立ち回りも美しく派手。ストーリー無しでも気楽に楽しめる、歌舞伎のお約束と様式美に満ちた一幕。

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