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97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
歌舞伎座、六月大歌舞伎「夜の部」
先週、金曜日は年休奨励日。のんびり朝寝して、午後は歌舞伎座「六月大歌舞伎」夜の部に。


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新作歌舞伎、「月光露針路日本(つきあかりめざすふるさと) 風雲児たち」の通し上演。「三谷かぶき」とも銘打たれている。

江戸の鎖国時代、、嵐で難破、漂流。ロシア領アリューシャン列島にたどり着いた伊勢の商船。この船の乗組員たちが日本へ帰国するための許可を追い求め、遥かサンクトペテルブルクまで移動してエカテリーナ女帝に拝謁し、帰国する。この苦労を描いた、みなもと太郎の原作漫画を三谷幸喜が脚本化。今回、新作歌舞伎として歌舞伎座にかけることに。

襲い来るどんな苦難にもめげず、日本への帰国という意志を貫き通し、他の乗組員たちを鼓舞し続けた大黒屋光太夫を幸四郎が印象的に演じる。そもそも実話に基づく物語だという。

三谷幸喜は、あちこちにドタバタと笑いを入れて、実に賑やかにして退屈しない脚本に。幸四郎、猿之助の掛け合い部分も面白く、ロシア版「弥次喜多」の趣あり。

ただ、三谷は、俳優八嶋智人とのまったく歌舞伎味の無い(笑)イヤホンガイドの対談で、幕開きに登場する狂言回し役の松也の名前も覚えていない位だから、歌舞伎知識は殆ど無いと思わせる。登場人物の個性が現れた脚本との評もあるが、白鴎、幸四郎、猿之助、愛之助位しか、おそらく三谷は知らないのでは。

一幕目の冒頭、最初から定式幕は開いており、立体的な舞台装置の上に波をイメージした巨大な布がかけられている。

花道から登場した松也はメガネにスーツ。大学教授風に、「答えないと単位をやらんぞ」などと客をいじって笑わせると共に簡単な状況説明。かなりアドリブも入っているような。

日本には元々優れた大型帆船製造の技術があったが、諸大名の反乱を恐れた徳川家康が、帆が1本の帆船しか建造を許さなかったため、船の操作が安定せず、この頃は海での遭難が多かったというトリビアは興味深い。なるほどねえ。

波が描かれた布を使った嵐の描写の後、最後の手段として帆柱を切り倒し、沈没は逃れたが、操船の手段を失ってあてなく漂流し続ける商船神昌丸と乗組員たちが登場。

手前勝手な個人主義の愛之助や、文句が多いが頭の回転が早く、洒脱で軽妙なセリフで客席を沸かせる猿之助など、人物の個性は良く立っており、面白い。役者同士の楽屋落ちのくすぐりも連発。

イヤホンガイドでの三谷によると、猿之助は最初の舞台稽古からずっとふざけ続けており、最後のほうになって三谷から「一度だけ真面目にやってもらえませんか」とお願いした由。

難破船がアリューシャン列島に辿り着いてなんとか生き延びるところまでが第一幕。ここで30分の幕間。

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「花篭」で芝居御膳で一杯。小皿にパンがついたメニューを食しているお客が結構居て、あれは何かいなと思っていたら、この劇のロシアに引っ掛けた「ボルシチ定食」なのであった。

男女蔵は、切り倒した帆柱で激しく頭を打ち、大分ネジが外れてしまった妙な船員を好演。幸四郎の大黒屋光太夫は、第一幕ではどこか頼りなさを感じさせるが、やがて全員を鼓舞する意志の強いリーダーとして成長してゆく。染五郎も後半になるにつれ、責任感を感じる大人の船員に。高麗屋の成長譚でもある。白鴎は若手中心の座組にきちんと重みを与えている。

大雪原を犬橇で走り続けるスペクタクルなど見所も多く、随所に挿入される笑いの部分と若手による熱演、日本への帰国と別れを描く第三幕も盛り上がった。
 
大詰めでも松也が登場し、「皆さん、私はもう帰ったと思っていたでしょう」と観客を笑わせる。最後にはカーテンコール2回あり。客席スタンディングオベーション状態に。公演としては大いに盛り上がった。

ただ、脚本そのものには、さほどの歌舞伎味はなく、歌舞伎風の演出は、幸四郎、猿之助や愛之助など、歌舞伎役者たちが舞台稽古で「あれを使おう」「こうやろう」など相談して次々に決めて行ったという。歌舞伎役者は元々が演出家を兼ねているから、自在にそんな事もできるのだろう。

つけ打ちや義太夫、簾内の下座音楽など、歌舞伎の仕掛けも一応使用されてはいるのだが、さほど印象には残らず、若干妙な歌舞伎風味ではある。まあだから「歌舞伎」ではなく、「三谷かぶき」と称する所以か。客席にも、歌舞伎ファンではない観客も結構いたと思うのだが、誰でも楽しめる3幕。多様なものを平然と内包できる、歌舞伎の柔軟性と奥深さを感じさせる公演でもあった。これもまた歌舞伎だと感じた舞台。

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