97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
できそこないの男たち
「できそこないの男たち」(福岡伸一)読了。

San Joseの紀伊国屋書店平積みでこの新書を手に取った時は、女性学の本かなと思ったが、著者の名前に記憶あり。「生物と無生物のあいだ」がベストセラーになり、最近は「福岡ハカセ」として、週刊文春にも連載を持ってブイブイ言わしてる分子生物学が専門の学者である。

そういえば、以前に読んだ、「プリオン説はほんとうか~タンパク質病原体説をめぐるミステリー」も、実に面白かった。

この本は、性別を決定する決定するSRY遺伝子の探求がどのようになされたかの話から始まり、性別はなぜ生まれたか、他の動物での性別はどのような役割を果たしているか等の「性別」を巡る科学について、真理の探究に没頭する研究者のエピソードを交えて興味深く語る科学エッセイ。

すべての生物の「基本仕様」はメスであり、オスは、そのバリエーションに過ぎない。本来は、アダムからイブが生まれたのではなく、イブからアダムが生まれたのだ、という説明は、なかなか面白い。

アリマキは、普通はメスだけが生まれ、単為生殖で増えてゆく。しかし、環境が変化する冬前にだけ、オスが生まれるが、交尾したらもうオスは生まれなくなる。アリマキの場合、オスが果たすのは、環境変化に対応した種の保存を図るため、メスからメスに連綿と受け継がれた遺伝子を、単に交雑するだけの横糸としての役割であり、常にその存在が必要な訳ではない。アマゾネスの話を思い出して、なんとも複雑な心境になるエピソード。

人間の受精から発生までの過程を見ても、人間の基本設計はもともと女性主体で、男性への性別決定遺伝子が働いた場合、その基本設計に例外として修正が加えられ、男性が生まれるのだという。

人間の寿命について、女性のほうが長い事も、基本設計に由来するのかどうかについては若干の疑問を感じるが、気楽に読めて、実に面白い本。

ただ、例え話は時として理解に役立つが、度が過ぎるとかえって話を分かりづらくする。この本でも、遺伝子を本に例えて、長々と説明しているのだが、逆に理解を阻害しているように思えるのはご愛嬌。人気者としてたくさんの著作を書き飛ばしているから、筆が滑ったか。

点描されるポスドクの研究生活部分や、研究者の金銭ゴシップを扱った部分は、ある意味、余談あるいは脱線で、眉をひそめる人もいるかもしれないが、この著者の場合、この脱線部分が面白い。どのエピソードも、実に興味深く読んだ。
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