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97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
「死刑」 人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う
先週だったか、San Jose紀伊国屋で購入した、「死刑」を読了。

著者の森達也は、昔、TVのドキュメンタリーを撮ってた人物。「ドキュメンタリーは嘘をつく」という本は、制作の虚実を製作者の内面を踏まえて描いて、なかなか面白かった。他にも、「スプーン~超能力者の日常と憂鬱」や、「下山事件~シモヤマ・ケース」など、結構この著者の本は読んだことがある。「下山事件~最後の証言」の著者は、森達也が彼の証言を捏造したと非難しているのだが、確かに、森達也は、著作だけ読んでも、なんとなく癖のある一風変わった人である。

今回の著作は、死刑を巡る「ロード・ムービー」として、日本の死刑制度の現実と、それがどうあるべきかを、様々な人々にインタビューして著者が考察してゆくというもの。

欧州の先進国では死刑制度はほとんど廃止されており、現在でも死刑制度を維持しているのは、アジア、アフリカの後進国が中心。先進国では、日本とアメリカくらいであることはよく知られている。しかし、日本の世論調査では、死刑制度の維持に賛成する意見は常に80%を超える。

死刑廃止運動には、新規の参加者が増えず、昔からの熱心な支持者だけで細々と続けているという現状は、この本で著者がレポートしているのだが、なかなか興味深い。我々こそが真理だと、ガリレオのような心境で運動に打ち込んでいるのであろうか。

死刑囚の弁護士や、肉親を殺されながら死刑廃止運動にかかわることにした被害者、死刑囚の最後の瞬間に立ち会う教誨師など、著者のインタビューの対象は広く、これも読み応えがあるところ。

個人的には、現時点での死刑制度の単純な廃止には賛成できない。池田小学校で8名の児童を刺し殺した男や、光市の母子殺害犯など、残念ながらこの社会には、再び世の中に出てきてもらっては困る犯罪者、すなわち、民のうちから永久に絶たれねばならない鬼畜が現に存在しており、彼らを社会から実効的に隔離するには現行法制下では死刑判決以外にありえない。現行の死刑が、10年経ったら仮釈放の可能性がある無期懲役に自動的に振り替えられては困るというのがその理由。

永山基準なるものもあり、従来から、一人や二人殺しただけでは死刑になっていない。現状の確定死刑囚というのは、実に呆れるほど凶悪な連中ばかりである。必ずしも執行を急げとは言わないが、どうかずっと塀の中にいてくださいと願うばかり。

死刑廃止論者は、仮釈放の運用は近年厳格になっており、10年で仮釈放など絵空事だと指摘する。ただ、この厳格化は、仮釈放者の再犯が相次ぎ、国民的非難が沸騰したことを背景に近年急速に進んだものに過ぎない。運用次第で厳格になるのならば、ほとぼりが醒めればまた運用が緩むことも当然あるだろう。お役人の胸三寸で仮釈放が多くなったり少なくなったりしても困るのだ。長期の有期刑を導入し、仮釈放最低期限も延長、犯罪によっては仮釈放を認めないオプション等も提示してから、死刑廃止を議論してはどうか。

この本で、著者は様々な人々に死刑制度を巡る問題についてインタビューするのだが、最初から自分は死刑に対するスタンスは決めておらず、ニュートラルな立場であると言う。

しかし、例えば、「すべての死刑確定囚は、命の重さを受け止めて、反省して人間性を取り戻して、地獄ではなく天国に旅立ってゆくべきなのだ」と、死刑をテーマにした漫画「モリのアサガオ」で主人公に語らせた漫画家の郷田マモラに対しては、「美文に逃げたとしか思えず納得できない」と森達也は述べる。このあたりの言葉の端々には、やはり、著者自身のスタンスが最初から現れているように思うのは私だけだろうか。

本の帯には、「人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う」と書かれている。これが、取材の果てに、いったん著者がたどり着いた心境。この本は、「僕は願う。彼らの命を救いたい」と結ばれる。

彼らというのは死刑囚のことである。たとえ人を殺した者であっても、殺すべきではないという、死刑反対の立場。著者は、これは「論理ではないし情緒でもない」とも述べているのだが、これには若干の違和感を覚えるところ。

「殺すべきではない」「彼らの命を救いたい」というのは、実は、凶悪殺人を犯した死刑囚側にこそ、なぜ人を殺す前に思い至らなかったのか、厳しく問われるべき断罪のセリフにもなりうるのである。 死刑制度が現時点で存在する以上、犯罪者ではなく、社会のほうにそれを問うのは、ちょっとお門違いではないか。美文に逃げて、自己陶酔した情緒を押し付けているのは、著者、森達也のほうであるように思われるのだが。

私自身は、森達也よりも、上記の郷田マモラの考えに同調する。「光市母子殺害死刑判決と永山則夫」にも書いたが、死刑囚にも、心静かに自らの罪を深く内省し、心の平穏を得てから、この世を去って行くチャンスがある。ヒーローに祭り上げて、本人を勘違いさせたまま死なせてしまった永山則夫支援者には、深い違和感を覚えるものである。

去年の1月初版で、すでに5刷。死刑に関する議論は、簡単に結論でるようなものではないが、凶悪犯罪の報道、その判決の報道があるたびに、誰の胸にもひっかかりを残す重たいテーマ。著者の立場に同意はしないが、一読の価値はある本。

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