97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
「この世でいちばん大事な「カネ」の話」~貧困からの脱出
「この世でいちばん大事な「カネ」の話」読了。西原理恵子が漫画ではなく、真面目に文章を書いた本。理論社の「よりみちパンセ」というシリーズは初めて見たが、漢字に全部ルビが振られており、おそらく小学生高学年から大人まで幅広くターゲットにしているようだ。さすがに読者層を考えたか、エロ系の暴走は無し(笑)

お金の話はメインというよりも、人間が生きてゆく上では必須の存在である「カネ」の話題を、一種の「狂言回し」にして、サイバラ自身の生い立ちと、貧困からの脱出を語る自伝となっている。

従来、あちこちの作品で散発的に描かれてきた自らの生い立ちだが、まとまって形で文章で明らかにされるのは、おそらく初めてなのではないか。高校を退学となった際、納得がゆかず、学校相手に訴訟を起こした話など、実に興味深く読んだ。

サービス精神の旺盛さが(なぜサービス精神旺盛かも、本書でその深層心理が明らかにされているのだが)過激な自虐を生むサイバラの漫画も面白いのだが、この本は若い読者を対象に、本人も照れずに真面目に書いており、普段は、無頼の仮面の下に注意深く隠されている、同情深く心優しい素顔が、普段よりも若干余計に透けてみえているのが面白いところ。

美大時代から世に出るまでを描いた部分がまた圧巻。才能のある同級生や裕福な家の同級生とは自分は違うのだと自覚し、自分の才能の限界を見据えた上で、どうすれば生きてゆけるかをしっかり考え、誰よりも努力していたことが、本人の口から嫌味なく語られている。

生まれながらの貧困から、どうしたら脱出できるかを真剣に考え、自らの努力で掴み取った現在。負の連鎖から抜け出す道は、ちゃんと存在するのである。

いったん離婚したアル中の夫、鴨志田譲がアル中を克服して家庭に戻り、ガンで亡くなるまでの最後の半年。

「子どものころから、欲しくて、欲しくて、でも、どうしても手に入れることができなかったものを、鴨ちゃんも、わたしも、ついに手に入れた」

という述懐も泣かせる。ごく普通の家族の団欒こそ、貧しかった頃には手に入らなかったものなのであった。

巻末にある「おわりに」は、自己韜晦や自虐に陥らず、サイバラが真正面から本気で書いた、おそらく日本のあちこちにいるだろう、昔の自分と同じような境遇の子供にあてたエール。これまた素直に心を打つ。

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コメント
この記事へのコメント
漫画も好きだし、りえぞーセンセもかなりタイプだったりするんですが(笑)、なんていうか、自分が草食獣だとすると肉食獣とか猛禽というようなとてつもない隔たりを感じます。なんていうか、修羅の匂いというか・・

まあ、それぐらい突き抜けているから面白いし惹かれるんですけどね(笑)。
2009/02/16(月) 09:24:01 | URL | taka #xJy3ruYo[ 編集]
辿ってきた生い立ちを、この本などで振り返ると、純粋にただ、凄いなと思います。高知の人というのも、ずいぶん突き抜けた人が多いとも思いますが(笑)
2009/02/16(月) 16:41:28 | URL | Y. Horiuchi #-[ 編集]
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