97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
「天皇陛下の全仕事 」
「天皇陛下の全仕事 」読了。

元宮内庁担当であった新聞記者が、天皇陛下が毎日、どこで、どのような仕事を行っているのか、詳細にレポートした本。新書ではあるが、適当に書き飛ばしたものではなく、国事行為から、拝謁や、外交関係の謁見、宮中の祭事に至るまで、天皇陛下が普段仕事として何をしているのか、実に細かく調べて書かれており、座右に一冊置いて、天皇陛下の動性などが報道される時に紐解くと、実に参考になる本。

国事行為として行う、閣議決定されて上がってくる書類の決裁以外にも、上がってくる書類は山のようにある。新任した大使との信任状奉呈式、勲章を授ける親授式、日本の各地訪問に外国訪問、来日した要人との会見や晩餐会、伝統的な宮中祭祀に、福祉施設訪問や被災地へのお見舞い。

宮崎訪問の実際のスケジュールが掲載されているのだが、皇居から25分で羽田空港まで。空港到着から5分で飛行機に乗り込み出発。その後も全て分刻みのスケジュール。ほとんど息を抜くヒマも無い、実に過密なスケジュール。随行員の車列の並び方や、空港でのお見送りに誰が来ているのか、天皇陛下が普段乗る車や、国賓の歓迎式典や晩餐会の段取りなど、普段は報道されることのないトリビアも満載。

国務大臣任命の御名御璽が写真入りで掲載されているのも実に興味深い。現在の天皇陛下の「明仁」という署名は、小学生の習字のような几帳面で清々しいばかりの楷書。政治家は、閣議の署名にあたって、「花押」という、ひねくりまわした独特の署名を使うのだが、逆にそれが下賎な下々の習慣に思えるな(笑)。

天皇の仕事の中には、公式行事でなくとも、ほぼ公式と化した細かいものがたくさん含まれており、例えば勤労奉仕団への「会釈」がその一例。

皇居には、ボランティアで全国各地から敷地清掃などに勤労奉仕団が毎週訪れている。天皇皇后両陛下が、この奉仕団に会われて言葉を交わされるのが「会釈」。あくまでも正式な謁見ではなく、作業しているところに、たまたま両陛下が通りかかられ、一言二言言葉を交わされるという形を取っているので、公式な行事ではない。しかし、地方訪問やご静養以外の時は、ほとんど毎週、この「会釈」が予定されているそうだから、まあルーチンの仕事と同じである。

通読すると、天皇陛下の公務というのも実に様々。土日に入る予定も数多く、大変な激務であることが分かる。年齢からも、公務を削減してはとの提言もあるようだが、果たして今の公務を減らせる余地があるだろうか。

ひとつ思うのは、内閣総理大臣の任命、最高裁長官の任命、憲法改正、法律、政令、条約の公布、国会の召集等の「天皇の国事行為」が、一番形式的で不要ではないかということ。上がってくる書類に自動的にサインするだけで、天皇陛下は何も決定しないし、意見を述べる余地すらない。削減しても実質的には何の不都合もない。しかし、これが一番削減しにくい仕事でもある。なぜなら、この国事行為は日本国憲法に定めてあるから。

そもそも、「内閣の助言により行う」との日本政府案を、天皇の政治関与を断ち切りたかった米国が押し戻し、「内閣の助言と承認を必要とし、内閣がその責任を負う」と、くどいほど天皇の権限を葬り去ったのが現行憲法の定め。確かに内閣が承認して責任を負うものに、何も助言しなくてもよさそうなもので、文章としても矛盾している。まあ、制定の際の押し合いへし合いの結果がそのまま残っているのだろう。

宮中祭祀や、国際親善活動、福祉施設訪問や被災地お見舞い、戦没者追悼式出席など、一概に削減できかねるものもあるし、外国大使との謁見や叙勲対象者への拝謁なども、止めてしまうとガッカリする人も多いだろう。

「国体」「全国植樹祭」「全国豊かな海づくり大会」への出席は、毎年行われて、「三大行啓行」と呼ばれるらしいが、これについては形骸化しており、もう必要ないんじゃないのではという気もしないでもない。まあ、しかし、そうなると地方訪問の機会が激減するしなあ。まあ、実際のところ、なかなか難しい話である。

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