97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
ジャン=レオン・ジェロームと「絶頂美術館」
土曜朝は4マイルほど外を走る。風が涼しく気持ちよい。午後はハンドルを握って、久しぶりにSan Franciscoのダウンタウンまで。

Lincoln Parkにある、「Legion of Honor」という美術館に。シカゴやNYと比べると、SFにはあまり大規模なミュージアムがない。アメリカの美術館というのは、印象派の絵など美術品を買い漁った大富豪からの寄贈で成り立っている部分が大きいのだが、やはり街としての歴史と、住んでた富豪の数が違うのかもしれない。

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小高い丘の上にある美術館は、コンパクトにまとまったサイズ。正面の駐車場から見下ろしたところはゴルフコースになっており、ダウンタウンの町並みを眺めながらゴルフができる。あまり手入れがよいとは言えないようだが。

収蔵品はさほど多くなく、有名な超大作も無いのだが、16世紀から印象派の時代まで、少しずつ丹念に集めてあるという印象。しかし、あまり混んでおらず、のんびり見て歩くには好適。この絵の前でふと足が止まった。どこかで似たような構図とタッチの絵を見たことがあるが。。。

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しばらく考えて思い出した。NYのメトロポリタンで見た「Pygmalion & Galatea」。彫刻の女神像が作家により命を吹き込まれて動き出す。そんな物語を描いた絵に、タッチが似てるのである。調べてみるとやはり同じ画家の作品。

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この画家は、フランスの、ジャン=レオン・ジェローム。日本で開催されたオルセー展にも、「闘鶏」が来てたような記憶あり。

この人は、印象派が出る前のフランス芸術アカデミーの重鎮。印象派嫌いで知られ、マネやモネの絵を「フランスの恥辱」と呼んで徹底的にこきおろし、自分が審査員だった際には決して印象派の画家を入賞させなかったとか。

しかし、その後の歴史を見れば明かだが、画壇の天下は印象派のものとなり、彼は逆に古臭いスタイルの画家としてしか後世に伝えられていないのであった。映画「アマデウス」で、モーツァルトの天才を妬んだサリエリを思い出すような話でもある。

この、ジェロームに関するエピソードは、先日読んだ、「絶頂美術館」からの受け売り。エロスから俯瞰する美術論として、実に面白い美術解説本だった。

その本で紹介されていたジェロームの代表作が、下にある「ローマの奴隷市場」。この人はしかし、女性の裸体を後ろから書くのが好きだねえ(笑) 

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キリスト教的規範が成立した中世以降のヨーロッパは、一種禁欲的な世界であり、女性のヌードをただヌードのために描くことは不謹慎とされ、難しかった。だからこそ、画家達は、ギリシャ神話や、聖書の物語、あるいは遠い異邦の習慣という言い訳をおいて、セッセとヌード絵画を描いていたのである、というのが、上記「絶頂美術館」の主張。

このジェロームの絵ももちろん、「エロス目的で描いたのではなく、ローマの奴隷市場の歴史的一場面を書いたのですよ」、という、一種の建前というか、エクスキューズ込みで描かれているのである。

そう思って、この「Legion of Honor」に所蔵されている、印象派前の西洋絵画を見るに、ずいぶんヌードが多いが、確かにそれぞれにみんな、「ビーナスの入浴」やら、「音楽の女神(ミューズ)」とやらの名前がついている。

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上の絵に描かれた女性達は、みんなビーナスや女神。しかし、この種の絵は、要するに、現代で言う、篠山紀信が撮影したアイドルのヌード写真みたいな位置づけで、当時も成立していたのかもしれないなあ、などと考えつつ美術館を歩く。

もちろん、当時の画家も、裸体ばかり書いていたわけではない。上記「絶頂美術館」によれば、ジェロームが描いた、ローマの剣闘士を描いたこのような歴史画(Phoenix Art Museun所蔵)は、映画「グラディエーター」などにも影響を及ぼしているのだとか。

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古代ローマのコロセウム。死闘の後で勝ち残った戦士。血に酔った観客達は、親指を下に向けて、「敗者を殺せ」とアピールする。興奮のルツボと化したアリーナは、群集の歓声と共に、更にヒートアップしてゆく。まるでタイムマシンを使って歴史の一場面を切り取ったかのような、画家のイマジネーションに輝く一枚。

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