97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
「アンティキテラ 古代ギリシアのコンピュータ」
「アンティキテラ 古代ギリシアのコンピュータ」。昨夜読み始めたら、一気に読了。

20世紀の初頭、ギリシャのアンティキテラ島の沖合いから、沈没船が発見され、ブロンズの像やグラス、壺などの積載品と共に、奇妙なブロンズの腐食した物体が引き上げられた。よく観察すると、そこには古代ギリシャ文字と歯車のように見える構造が複雑に組み合わさっている。

紀元前に沈没したローマ船の積荷に、1,000年以上後で発明された時計のような構造を持った機械が積まれていたのは、いったいなぜか。そして、この「アンティキテラの機械」は、いったい何のために作られたのか。この本は、この機械の謎を追った研究者の苦闘を描いたノンフィクション。

実物の写真は、WikiのAntikythera mechanismにも掲載されている。

この「機械」は、昔、A.C.クラークが製作した、オーパーツを巡るTV番組にも登場したほど、昔から有名。しかし、著者が述べるように、フレデリック・フォン・デニケンが「未来の記憶」で取り上げたのが、かえってニセ物との疑いが生まれる契機となり、かえって不幸なことであったかもしれない。まあ、デニケンも、なんでも宇宙人のせいにして、実に胡散臭かったからなあ。

この本では、この機械の謎に魅せられた研究者達が、お互いに牽制や駆け引きをしながら、その謎にどのように迫っていったかが、詳細に語られている。潜水病の話を長々と書いたり、研究者の経歴の末節にも踏み込みすぎの感があり、もう少し整理したほうがよかった気がするが、全体として、まるでサスペンスを読むように興味深く読める。

高エネルギーX線とCT、そしてCGによる高度な画像処理技術を駆使して、2005年に行われた研究は、その後「ネイチャー」に掲載された。最新の機器による分析は、その内部構造を明らかにし、この機械が一種の階差機関(ディファレンス・エンジン)であることを明らかにする。そして、CTで判読できた刻印された古代のギリシャ文字や、機械の組み合わせ比率に反映された暦が、特定の古代の都市のものと一致することは、この機械が、2000年以上前に作られたものであるという驚くべき事実をも明らかにしてゆく。

誰が、何のために作ったのかの探求も興味深いが、もうひとつ興味を引くのは、2000年以上前に確立していた、高度な機械を作るこの技術とその利用が、何故その後失われたのかに関する考察。

著者は、西欧の古代ローマから中世にわたる時代は、科学にとっての暗黒時代であり、バビロニアやギリシャで発達した高度な天文学の知識は失われ、イスラム科学の中にその一部が伝承されて後世に伝わったのではないかと推察する。

ローマから中世への歴史は、ちょうどキリスト教隆盛の歴史と重なる。キリスト教と科学の対立や、古代科学がイスラム世界に伝わった可能性については、科学技術史の面から、再び見直されてしかるべきかもしれない。それにしても、実に面白い本であった。
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