97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
金子正次の遺作、「竜二」
「竜二」は、1983年、金子正次が脚本・初主演した映画。自主制作ながら、全国公開までこぎつけた。しかし、金子は、全国公開のわずか一週間後に、胃ガンで亡くなっている。享年33歳。



この映画は、その年のキネ旬ランキング日本映画第3位を獲得。「たった一作の映画で伝説になった男」というキャッチも心に残る。金子が、同じく若くして死んだ松田優作と親友だったというのも、実に奇妙な因縁である。

ヤクザの末端組織に属する主人公の竜二が、結婚して子供が生まれ、やがてヤクザから足を洗おうと考える物語。派手な組織の抗争も、拳銃も、殺人も、ここには出てこない。しかし、登場人物のセリフやエピソードには、不思議なリアリティがあり、一人の等身大のヤクザの心の葛藤を描いた物語として成立している。背景に映りこんでいる1980年代という時代も、実に懐かしい。

俳優としての金子正次の演技は、無骨で、いくぶん生硬な印象もあるが、それでもなお、不思議な存在感がある。脇を固める永島暎子、桜金造も好演。元フォーリーブスの北公次も、竜二の子分役で出演。

北広次が、失礼ながら、すでにフォーリーブス時代にその魅力を全部搾り取られたのか、全盛を過ぎた抜け殻に見える。しかし、金子正次は、まだ無名の俳優であり、自分の魅力をどのように演技に押し出すか、それさえも手探りの状態なのだが、明らかに原石の持つ輝きを放っている。生きていたら、どんな俳優になったろうか。

カタギになった竜二が、汗を流して真面目に稼ぐ月給は、ヤクザ時代なら2~3日で使い果たしてしまう程度。疲れ果てた仕事の帰り、肉屋のバーゲンの列に並ぶ妻と子供を見た時、彼の中で何かの糸が切れる。

市井の小さな幸せに背を向けて、かつて自分が属した闇の中に帰って行く。そんな哀しいヤクザ者の光と影を描いて、小品ながら実に印象的な映画だった。

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この記事へのコメント
やくざ映画に見る 人間の本音?
映画 竜二を19歳のころ たまたま チンピラ(柴田恭兵 ジョニー大倉 二人とも好きな役者だった)同時上映でやっていたのでみた。無名の金子正次さんだった。あんまり宣伝もなかったかなぁ。映画館が人気がなくなりはじめる頃かなぁ。今 私は 44歳だが 竜二を忘れることはない映画であり、役者である。やくざもサラリーマンも厳しい世界なのだと思う映画 どちらがリスクが大きいか 人生は金なのか? 命をかけた金子さんの映画だった。その後 優作さんが ブラックレインという外国の映画に出演して やはり 癌で 6年後?同じ日?に死ぬ 金子さんと優作さんは 友人だったという話である。
2010/02/07(日) 16:11:27 | URL |  村石 太1851号 #DQYk9Acg[ 編集]
竜二
コメントありがとうございます。

「竜二」は、大作ではありませんが、映画に反映した80年代の世相と、金子正次の独特の存在感で、記憶に残る映画ですね。

金子や松田優作が生きてたら、今頃どんな映画で、どんな演技をしてたでしょうか。
2010/02/08(月) 15:08:59 | URL | Y. Horiucci #-[ 編集]
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