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97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
「The Cove」を見た。
先日ドキュメンタリー映画部門でアカデミー賞を獲得した「The Cove」のDVDをアメリカで発注。



昨日届いたので、自宅に戻ってから鑑賞。ドキュメンタリーといえども、もちろん真実のみを映す訳ではない。そこには必ず製作者の意図が入っている。このドキュメンタリーは、イルカ保護運動家の視点から描かれているので、これのみが真実だと断言はできないが、一見して実に衝撃的な作品であることは事実。

作品のガイド役を務めるのは、リック・オバリー。昔、「わんぱくフリッパー」というイルカを主人公にしたTV番組があったが、彼はそこで使われたイルカの調教係として活躍。しかし、可愛がっていた一頭が、ストレスから彼の腕の中で死んだ(彼によれば自殺した)。このことから、オバリーは、人間による捕獲や調教がイルカにとっていかに残酷な事であるかを認識し、イルカを自然に戻す運動に一生をささげることになる。

彼の運動は、たとえ法律を犯してでも、虐待されているイルカを海に返し続けるというもの。何度も逮捕や罰金を受けながらも運動を続ける彼は、国際捕鯨委員会(IWC)にも乗り込んで、イルカの保護を訴えるも、イルカは鯨ではないとして門前払い。そんなイルカ・フリークである彼が、和歌山県太地町で見たものは何か。

毎年9月、沖合いからイルカの群れを入り江に追い込む漁が行われる。イルカの群れを網で囲い込み、15万ドル相当でイルカ・ショー用に全世界に向けて出荷される若いメスのイルカだけが生きて捕獲される。そして、その他のイルカは全て入り江で殺されるのだ。その数は年間2万3千頭だという。

捕鯨問題については、鯨を食するのは日本古来の文化だとの反論が常になされる。ではイルカについては?

オバリーは、「太地の漁師は、イルカの屠殺は伝統であり文化だ、お前達が牛を食うのと同じことと言う。しかし、そんな説明は嘘っぱちだ」と語り、東京や大阪での街頭インタビューを引用する。「イルカが年間2万3千頭も殺されて食肉にされていることを知ってますか」と聞かれた街頭の人の反応は、「そんなことまったく知らなかった」というもの。私自身も、鯨肉はずっと以前に食した経験があるものの、果たしてイルカ肉を食するのが、日本古来の文化だろうかと疑問がわくのも事実。

このドキュメンタリーが更に追うのは、イルカ肉が鯨肉と偽られて流通してるのではないかという疑惑。そして、海の食物連鎖から、イルカ肉には安全基準を遥かに超えた水銀が含まれており、そもそもイルカ肉を食肉にすべきではないのだという主張。

太地町の辺りは、国立公園に当るそうだが、イルカの屠殺が行われる小さな入り江は、注意深く余所者の目から隠されている。入り江を見渡せる岬は有刺鉄線が貼られて立ち入り禁止。この映画の取材クルーには尾行がつき、禁止地域への立ち入りを妨害する漁師達。そしてこのドキュメンタリーのクライマックスは、あちこちに設置された隠しキャメラを使って、太地町の許可なしに撮影されたイルカ屠殺の映像。屠殺が終り、血で真っ赤に染まった入り江の映像の持つ衝撃は凄まじいものがある。映画の題名「The Cove」は「入り江」という意味。

全体の演出も実に巧みで、観客をイルカへの深い同情に誘うもの。

海中を泳ぐダイバーには、イルカは好奇心を持って向こうから近づいてくる。海中でイルカの身体に手を触れながら一緒に泳ぐ女性ダイバーの美しい映像。そしてその彼女が太地町の浜辺で見たのは、何度もモリで突かれ、大量に出血しながら、必死に逃げようと岸に向って泳ぎ、ついに力尽き沈んでゆくイルカの姿。そして、「オイ、見るな」「あっち行け」と乱暴に、涙ぐんでいる彼女を押し戻す漁師達。もちろんこの演出にはバイアスが存在する。しかし、こんな風に編集されたら、太地町もずいぶん分が悪い。このドキュメンタリーを見たら、たとえ日本人であっても、太地町を積極的に擁護する気分にならないのはうけあいだ。

そして、全編を通じて語り部となっているリック・オバリーが印象的。彼は明らかに変わり者だが、イルカへの愛は本物だ。「もしも、こんな小さなことさえ解決できないのなら、我々にはもう希望はない」と語る彼の眼は、常に哀しみに沈んでいる。

太地町漁協の幹部はアカデミー賞の報道に、「何を言っても映画の宣伝になるので、取材には応じられない」と取材拒否したそうである。日本での上映にも反対運動の機運があるとか。しかし、まあ、捕鯨問題は別として、このイルカ漁は本当に必要だろうか。太地町の漁師達の反論も聞いてみたいものである。

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コメント
この記事へのコメント
 現代は飽食と飢餓が同居している時代でしょう。 2009年調べで10億を超す飢餓人口が存在します。 食料輸入の多い日本は自給率を上げ輸入量を少しでも下げるのが飢餓を減らすのに必須と思います。 この為にはイルカでもなんでも食えるものを食うのが正しいと思いますが。
 それともまさか餓死する人間よりイルカが大事とお思いでしょうか? 
2010/03/19(金) 12:41:36 | URL | 超荒らしの通りすがり #EBUSheBA[ 編集]
>超荒らしさん

日本で、イルカを食わないと(あるいは屠殺しないと)餓死するような人間はいないし、イルカの肉を売ってるから食料自給率が上がってるとも思いませんがねえ。


2010/03/19(金) 14:14:25 | URL | Y. Horiucci #-[ 編集]
 日本は大量の食糧の輸入しているから餓死しないで済んでいます。 しかしそれはある意味飢餓の人間の食料を奪っていると思えませんか?
 少しでも食料価格が下がれば食料は飢餓地域に向かいます、ですから食料価格を下げるために少しでも食料自給率を上げるべきです。 
 それから
http://www.jaicaf.or.jp/fao/world/2006_dec.pdf
 を参照してみてください。 今の飢餓の原因が食料の不足ではなく食料の偏りによることが分かります。 
 ついでですが、ここにあるような欧米の過度な食料摂取は生命への冒涜ではないのでしょうか。 食料は基本的に全て生命を奪うことで得られています。 こちらの方がより問題かもしれません。
2010/03/19(金) 15:29:37 | URL | 超荒らしの通りがかり #EBUSheBA[ 編集]
まぁムキにならず、
「捕獲量を削減する努力はする」
みたいな感じで適当にあしらって、明らかに問題のある撮影方法とかは裁判で決着をつければいいと思う。
ああいう手合いと同じ土俵に立ったら負け。
2010/03/20(土) 00:32:34 | URL | 荒らしの通りすが #-[ 編集]
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