97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
「永遠の嘘をついてくれ」
昔懐かしい吉田拓郎の歌がフト聞きたくなって、YouTubeを放浪していたら、2006年、つま恋でのコンサートの映像が出てきた。中島みゆきが途中でゲスト登場する「永遠の嘘をついてくれ」。




この歌は、中島みゆきが吉田拓郎に提供したもの。歌の内容を普通に受け取るなら、立ち去った男に、取り残された女が、どうせ騙すのなら最後まで騙してほしいと語る、いかにも中島みゆき風の失恋歌なのだが、しかし実際に聞いてみると奇妙に硬質な、まるで運命を歌い上げる叙事詩のような趣がある。

1995年のアルバム製作時、吉田拓郎は自身の歌製作に深刻に悩んでおり、中島みゆきに楽曲の提供を頼む。吉田拓郎が他人に曲の提供を頼むというのは極めて珍しい事なのだそうだが、その時、中島みゆきが渡したのがこの「永遠の嘘をついてくれ」。中島みゆきは学生時代、追っかけをしていたほどの大の吉田拓郎ファンだったのだという。

そして、2003年の肺がん手術を経て復活した吉田拓郎が、この曲を2006年のステージで歌うとき、観客の胸に去来したのは、青春と人生を歌って一世を風靡した不世出のシンガー・ソングライターが、やはり老いつつあるのだという悲しい諦観。それを踏まえて聞くと、この曲はまるで運命の女神が、この稀代のスターに対して、「ステージで走り続けて、人に夢を与え続けろ、最後に倒れるまで」と囁きかけているかのように聞こえるのだ。

君よ永遠の嘘をついてくれ
いつまでも種あかしをしないでくれ
永遠の嘘をついてくれ
一度は夢を見せてくれた君じゃないか

そう、この歌はまるで、「あしたのジョー」で矢吹丈に、「リングに帰り、そしてそこで死になさい」、と囁いた白木葉子の言葉のよう。

拓郎の独唱の後、観客のどよめきと共にステージに突然現れた歌姫、中島みゆきは、吉田拓郎と共に立ったステージで、吉田拓郎の背負った運命を神託の如く高らかに歌い上げ、そして颯爽と一人で去ってゆく。

歌は常に真実を語る訳ではない。いやむしろ、あえて言うならそれは全部「嘘」である。しかし、「嘘」にしか語れない真実というものが常にある。だから我々は、時として歌の世界に迷い込んで行くのだ。

吉田拓郎は、2009年、自ら「最後」と称した全国ツアーに旅立ったが、体調不良によりその大半をキャンセル。もう人前に立って歌う機会は無いのではないか。そして中島みゆきは、もし吉田拓郎がいなくなったとしても、この歌を彼への鎮魂として歌い続けるだろうか。


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コメント
この記事へのコメント
この唄何回も聞いております。~小職47歳ですが、今も中島みゆきがあれだけ綺麗なことに驚愕を受けてます。拓郎も昔の硬派な感じからゆるくなっていい感じですよね~元カリフォルニア現南米住民
2010/04/29(木) 00:27:23 | URL | 通りすがり #-[ 編集]
実に心の琴線に触れるよい唄ですね。中島みゆきも、ツアーを記録した「歌旅」のDVDなど見ますと、移動中のプライベートな場面では、眼鏡かけた陽気なおばさんにしか見えないのですが、ステージに立つと、まさに歌姫に憑依されたかの如く変わりますね。
2010/04/29(木) 08:05:08 | URL | Y. Horiucci #-[ 編集]
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