97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
歌舞伎座「七月大歌舞伎」夜の部を観た。
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土曜日は、歌舞伎座「七月大歌舞伎」夜の部に。奇数月は大相撲の本場所もあるので、歌舞伎観劇と日程がどうしてもコンフリクトを起こす。見物が大分遅くなってしまった。

名古屋場所の十四日目は後で録画で観戦することにして歌舞伎座へ。心配というと、碧山が負けて白鵬が勝つと歌舞伎を見ているうちに優勝が決まってしまうことだが、なんとか碧山に頑張ってもらおう(笑)

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開演時間は4時45分と普通の公演よりちょっと遅い。歌舞伎座前には4時10分頃には到着したが既に入場は始まっていた。今回は一階席に適当なところが取れず、二階席最前列を選択。写真入り筋書きを購入。

夜の部演目は、「通し狂言 駄右衛門花御所異聞(だえもんはなのごしょいぶん)」

白浪五人男に出て来る日本駄右衛門を描いた作品。宝暦11(1761)年に初演された『秋葉権現廻船語』(あきばごんげんかいせんばなし)というオリジナルが存在するらしいが、長く上演が途絶えており、市川海老蔵が新たな演出陣を起用して様々な新しい趣向を取り入れた、いわゆる「復活狂言」となっている。海老蔵は3役を早変わりで演じ、どの場面も出ずっぱりで大奮闘。

豪華絢爛たる舞台背景、壮大な場面転換、アクロバティックな動き、プロジェクションによる背景、早変わり、ゾンビ、宙乗りなど、伝統歌舞伎のケレンに、新作歌舞伎や演劇の大胆な演出、ギミックを自在に詰め込み、満艦飾に賑やかな狂言。

最初の幕で多用される早変わりは、マジックでもあるミス・ダイレクションの手法で観客を欺くのだが、花道に止めた船にスッポンから移動するなど、なかなか変わった場面もあり。

古今の歌舞伎名場面をはめ込んでいる演出は面白いが、基本的に成田屋による成田屋のための狂言。海老蔵を見物する劇。海老蔵が登場するたびに場内は割れんばかりの拍手に包まれる。

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序幕から1時間たったところで最初の幕間。花篭で「文月御膳」で一杯。

この演目の見所は、なんといっても秋葉大権現の場最後、海老蔵とその長男、堀越勸玄の親子宙乗り。

秋葉権現の使いである白狐に扮した堀越勸玄が、揚幕が上がって花道を一人でトコトコ歩いて登場。四歳児には花道は結構長い。そして一旦引っ込んだ後で、いよいよ宙乗り。

宙乗りにはお涙頂戴の湿った空気は全くない。演目は悲劇の前から既に決まっていたのだから。神々しいまでの白い衣装で、不思議な静かな笑みを浮かべて、先月最愛の妻を亡くした男が花道から中空に上って行く。同じく最愛の母親を亡くした年端もいかぬその息子を腕に抱えて。実に歌舞伎的な様式美。

海老蔵は成田屋伝来の「にらみ」を見せ、勸玄も宙空を移動しながら客席に手を振り、そして何やら叫んでいる。あれは台詞なのだろうか、いや多分台本にある台詞では無いよなあ。

役者という人生、歌舞伎という世界の隔絶性と突き抜けた非日常性。歌舞伎の世界が孤高に屹立する様を、観客の我々はただ唖然として目撃する。

館内は鳴り止まない嵐のような拍手。この場に立ち会えなかった観客の分まで届くように。この日は先月亡くなった麻央夫人の月命日だったのだという。どこかできっと見守っていただろう。圧巻の宙乗りであった。

児太郎はなかなか印象的。中車は堂々たる役者ぶりで、筋書きで語っているように、確かに「歌舞伎の筋肉」が着いてきていると思わせた。

しかしこんなに拍手の多い歌舞伎座は、今まで経験したことがなかった。


「新橋鶴八」訪問。
金曜の夜は「新橋鶴八」。夕方に電話すると女将さんが出て「7時半までですと大丈夫なんですが」と。ダラダラ居ないのでまったく大丈夫。退社後すぐに入店。まだカウンタはガラガラ。

「時間切っちゃってすいませんね」と親方は気を使うのだが、問題無し。金曜はちょっと遅い時間から予約が立て込むので、早い時間なら大丈夫なんですよとのこと。

お酒は菊正の冷酒を貰い、お通しは蛤の貝柱ヅケ。これは粒は小さいが旨味が深くて好きだなあ。

まずカレイ。プリプリの活かった身。煮切りではなくスッキリした醤油で食するとこれがまた旨い。塩蒸しも房総産、大きなアワビ。煎り付けたような香ばしい香りと歯応え、旨味も素晴らしい。握りでは食べた事がないのだが、つまみで貰うと酒が進む。

「相撲は名古屋ですから、行ってませんよね?」と石丸親方が問うので、「先週遠征してきたんです」と相撲談義。「新橋鶴八最後の弟子」君が、「じゃあ宇良が日馬富士に勝った時ですよね」と。その後、親方入れてひとしきり宇良の相撲談義。先場所が技能賞だったよなあ。8勝の嘉風にやるんだったら。

軽く酢を潜らせたアジは、身はふっくらとして旨味と脂が乗っている。「そういえば分店ではイワシを出していた」というと、金目やイワシを出してるらしいですねとちゃんと情報が入っている。若いお客さんも多いからだろうけれども、イワシはちょっと下品な脂で、アジにはかなわないと思いますよと。金目も底魚なんで脂がくどいから、火を通すなら良いけれど寿司にはどうかなあとの意見であった。確かにそうかもしれぬ。

漬け込みのハマグリもつまみで。肝臓に染み渡るなあ(笑) 

この辺りで握りに。まず中トロ。米の旨味を残してふっくら仕上げたこの店の酢飯とよく合う。「新子がありますよ」と親方が言うので、コハダはひとつ新子で。3枚付くらい。薄いけれども、ここの普段のコハダ通りネットリした旨味を感じるねというと「腕ですよ(笑)」と石丸親方。江戸前伝来の仕事を残すこの良き店で、親方から軽口をきいて貰えるくらいの客になれた事に、なんだか静かな感謝と達成感を感じる。

アナゴもトロトロ。時期もちょうど盛りだ。仕事も素晴らしい。鶴八系のアナゴを食すると他の店のアナゴが食えなくなる。最後はカンピョウ巻きで〆。しみじみした満足感と共にタクシー帰宅。



大相撲名古屋場所中日観戦に遠征②
月曜の祝日。大相撲名古屋場所9日目を観戦してから帰京予定。

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朝は結構雲があり、カンカン照りよりはずっとよい。何時もはホテルをチェックアウトしてから、駅のコインロッカーに荷物を預けるのだが、今回はホテルから宅配便で送り返す事に。トランク一つ部屋までホテルのサービスが取りに来て、運賃は千円ちょっと。自分で引っ張って帰るよりこちらの方がずっと便利な事を発見。

場所に向かうが、東山線名古屋駅ホームは祝日の朝なのに、何か事故でも起こったのかと思うほどの混雑。銀座線や丸ノ内線でも休みの日はこんなに混まない。全員観光客とも思えないが。名古屋の人出というのは実に不思議だ。名古屋駅周辺だけが混むのかねえ。

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名古屋市役所の建物は何度見ても面白いフォルム。

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やってまいりました愛知県体育館。

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この日も「きっちり一人桝席」にて観戦。やはり狭い。もっとも座れる観客が増えるのなら、お互い様で仕方ないのだが。案内の女性は皆、明るく快活で親切。よそ者にとっては、名古屋の印象が実によくなる。

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土俵はますますヒビ割れているような。満員御礼の字や取組電光掲示板の字も変わっている。呼び出しの代替わりが徐々に進んで、土俵づくりもちょっと変わってきているのでは。よい変化とは思えないが。

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愛知県体育館で椅子席に座った事は無いのだが、ベコベコのプラスチックで、座布団もついてないし、随分と座りにくそうだ。両国国技館に椅子席がいかに快適に設計されているかが分かる。

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この日は昨日よりも少し後で外に出て、力士の場所入りを見物。

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今場所好調、栃煌山のマッチョ歩きが格好良いですな(笑)

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瞑想するかのような落ち着いた表情で場所入りする高安。しかしこの日は左を差した嘉風に上手く寄られて負けてしまったのだった。

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宇良の場所入りは回りから大声援。宇良の着物は背中に「うら」と書いてある。表と裏がハッキリ分かって親切である(笑)

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前日の白鵬戦も善戦したが、この日宇良は日馬富士をとったりで破る。素晴らしい相撲。横綱初挑戦と、翌日の初勝利を眼前で観れて実によかった。次の日の高安戦もなんども全身でぶつかり、レスリングのタックルのような足取りで高安を揺さぶって素晴らしかったが、ここで膝を怪我したのがいかにも残念。早く直してほしいが。

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この日も満員御礼。荒れる名古屋は暑かった。

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打出し後に名古屋駅まで。高島屋地下で「特上うなぎまぶし」弁当を購入して新幹線車中で食しながら帰京。いやあ、面白かったなあ。来年も来よう。

大相撲名古屋場所中日観戦に遠征①
大相撲名古屋場所、中日と9日目を観戦に名古屋遠征。備忘の写真日記を。

土曜日に前乗りして、名古屋城や熱田神宮など炎天下の中をブラブラして、夜は「風来坊」で手羽先など食する。タレが独特でなかなか旨い。それにしても、休日の名古屋駅付近は去年同様、東京都心よりも人出が多く、いつもごった返している。いったいどうなっとるんや(笑)。

10時過ぎにホテルを出て地下鉄で愛知県体育館まで。

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一年ぶりの名古屋場所は懐かしいな。

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名古屋は箱が小さめで一人枡席でも土俵は近い。しかし今年からこの桝席の幅が随分と狭まり、ゆったり度が大きく減少。幅にして5割がた狭くなったのでは。まあ大勢座れてよい事ではあるけれども。隣に人がいるともう通ることができず、パイプを越えて背後から通路に降りることに。

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席まで案内してくれたお茶子さんに弁当とチューハイを発注してまずは腹ごしらえ。

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名古屋場所は横綱大関も開場前の通路を通って場所入り。そして会場外なので、入場券無くとも力士の入り待ちは自由。ただ問題はカンカン照りの場合は日影が無い事。関取衆が車を降りる場所から入り口まで、唯一の日影はこの樹の下。さすがに時間が早いので人出は少ないが、既にコアなマニアが何名か。

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さすがに名古屋らしい金の鯱の優勝記念杯が。

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この力士像は愛知県体育館での名古屋場所開催50周年記念に制作されたらしい。今年は60周年。10年前の像なのか。

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今場所から審判部を外れた元寺尾の錣山親方は、入り口近くでファンとの記念写真に気持ちよく応じてファンサービス。

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今場所の土俵は何時もより随分と沢山ヒビが入っている。土の含水量が大分少ないのではないかな。その後で一部崩れて補修が大変だったようだが。

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十両陣の場所入り。毎日見に来ているという爺様が別の人に解説していた話によると、旭秀鵬が、十両では何時も最後に来るのだという。人気力士は大概場所入りが遅い。しかし旭秀鵬はそんな大物でも無いと思うけれどもなあ(笑) まあ、俺様は十両筆頭だという矜持から、敢えて遅く遅く来ているのだろうか。ま、負け越してしまいましたが(笑)

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阿炎はこの日膝にサポーターが。ちょっと痛めたようだ。朝乃山はまだ大銀杏結えないながらも風格が出て来た。

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幕内土俵入り、栃煌山は向正面に向かってめっちゃメンチを切っている。一体どうしたんだ(笑) 遺恨のある気に入らない客でも座っていたか(笑)

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フンガーっと気合を入れる高安。初日こそ取りこぼしたものの、中日まではなんとか白星を重ねていたのだがなあ。(過去形)

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宇良初めての横綱対戦は白鵬と。善戦したものが、敗北までを連続写真で。白鵬に右を差されたのが敗着ではあったが、左手をバンザイの形に上げてスッポ抜けを最後まで狙っているかのようなしぶとさ。良いものを見せてもらった。

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あっという間に打出しまで。名古屋駅まで戻って名古屋メシでも入れるかと地下街散策するも、人でごった返してどの店も長蛇の列。これはアカンと一番名古屋メシと関係ない所を探して、駅名店街の寿司屋で一杯。しかし名古屋駅近辺は、人が混みすぎて随分と逸失利益があると推察するが。

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ホテルの部屋はどえりゃー高い場所。夜景が綺麗だ。中日終了。


「新橋鶴八分店」訪問。
先週の木曜は「新橋鶴八分店」に。

空いているか当日にSMSでメッセージ入れると「8時までなら大丈夫ですと」。こちらは長居する気は元々無いのだから、出すものさえちゃんと早く出してくれればまったく問題ない(笑)

入店すると、大常連O氏がトグロを巻いている。しかし席は一番奥ではなく、手前から2番目。常連ヒエラルキーに変動があったのでは。店はテーブルにも客が入っておりほぼ満席。O氏隣の1番手前に案内される。やれやれ。最近は週に1回か2回しか来ないというが、なんで毎回会うかね。

五十嵐親方もいつもは無駄話しながらノロノロと出すのだが、さすがにこれだけ混んでいると真剣に仕事している(笑)。

お酒は加賀鳶を冷酒で。お通しは白イカに軽く火を通して醤油和えに。結構歯応えあるんだね。

食したものは、つまみでホシカレイ、塩蒸し、煮タコ、ミル貝、カツオにスマカツオ。カツオとスマカツオは産地も魚種も違うのだというが、あんまり違いが分からないな。

握りは中トロ、コハダ、イワシ、アナゴ、ハマグリを1貫ずつ。イワシを置いてあるのは珍しかったが、ネットリした脂が乗っており、なかなか旨かった。

大常連O氏は反対隣に連れが来たのでもっぱらそちらと雑談。あまり相手しないで済むから助かる(笑)。と言う訳で、早々と切り上げて、大相撲名古屋場所の録画を見るためにタクシー帰宅。


「新橋鶴八」の江戸前仕事
アカウントは作ってないので、普段インスタグラムにはアクセスしないのだが、そういえば「新橋鶴八分店」はアカウント持って写真アップしていたなと店名で検索してみると、店よりもむしろ訪問客の方が、山盛りのウニ軍艦と鉄火巻の写真ばかり、やたらにアップしているのに驚く。皆、そんなにウニと鉄火が好きなのかねえ(笑)

私自身は、「新橋鶴八」本店で、鉄火巻は一度だけ試しに食した事があるかな。「半分にしますか?」と石丸親方が尋ねるので、普通の1/2量にしてもらった。てんこ盛りのウニは多分「新橋鶴八」では今まで一度も頼んだ事がない。

「分店」ではどうかというと、自分からは頼んでないはず。ひょっとして勝手に出て来た事があるかなあ。いや、多分鉄火巻もウニも出て来た事は無いように思うけれども。どちらも食べづらい気がするし(笑)

そういえば、昔読んだ「鮨を極める (The New Fifties)」で、ウニやマグロについて「新橋鶴八」の石丸親方が語っていたなと本棚から引っ張り出してきた。

過去日記に書いたが、「新橋鶴八」で購入して石丸親方にサインしてもらった貴重本(笑)著者の早瀬圭一氏は、店でもお見かけした事があるが、年季の入った寿司食いで、神保町の「鶴八」先代、師岡親方の頃から「鶴八」に通っており、「新橋鶴八30周年パーティー」でも主賓挨拶に立っていた。

そして、この本にある石丸親方の話はこうだ。
ウニなんか箱ごと買って来て、軍艦巻きにしたご飯の上に乗っけるだけです。ですから出来るだけ沢山、山盛りに乗せます。鮨屋の手間は何もかかっていません。だからウニで儲けるなんて出来ません。

鮪もそうです。鮪を自慢する鮨屋になりたくありません。いい鮪を自分の懐具合を考えて選ぶのは当たり前です。そのかわり、穴子、小肌、蛤など手を加えたものからはちゃんと利益を頂きます。


「新ばし しみづ」は、マグロの質については若干方向転換しているようだし、太巻きの鉄火も、おそらくもう殆ど出していないはず。ウニの軍艦もごく普通の量。しかし、「分店」は、本店の基本をまだ忠実に守っていると思う。それとも、最近は大分乖離が出て来たかな。

「新橋鶴八」は、毎日築地に通って魚を仕入れ、毎日その都度仕込む。仕事を施した物だけが江戸前の真髄だという矜持が現れている親方のコメント。これを読むと、あんまりウニや鉄火巻を珍重する気にならない。「新橋鶴八」で食するべきは、サバ、コハダ、ハマグリ、アワビ塩蒸し、タコ、アナゴ、カンピョウ巻などの締めたり煮焚きした種だ。ウニや鮪を誉められても石丸親方はあんまり喜ばないはず。

それでは、仕事をした小肌や穴子が高いかというと、そんなことは無い。トロやウニなど、仕入原価が高い種よりも、むしろ仕事した種のほうがリーズナブルに食せるということが、ある意味凄い鮨屋である。「分店」も、名前を貰っているからには、全て本店譲りの仕事でやっていると思うのだが。



歌舞伎座「七月大歌舞伎」昼の部。
先週日曜日は歌舞伎座「七月大歌舞伎」昼の部。大相撲名古屋場所も初日なので、夜の部ではなく昼の部をまず選択。打ち出し後にすぐ戻って大相撲をTV観戦しなくては。

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歌舞伎座までタクシーで。外に出ると頭がクラクラするようなカンカン照り。それにしても、外でワゴン前に長い列作ってイヤホンガイド借りている人達がいるのだけど、入場してから二階の売店前カウンタで借りれば、殆ど待ち時間無くて便利だと思うんだけどなあ。まああまり余計な事書いて二階が混むと困るけれど(笑)

最初の演目は、「歌舞伎十八番の内 矢の根(やのね)」。紅梅白梅が咲き乱れる背景。おせちづくしの台詞、七福神への悪態、宝船の絵に初夢と、初春を寿ぐ目出度い要素ばかりの祝祭劇。

右團治演じる曽我五郎は、ゆったり大きく豪快で、荒事の雰囲気に良く似合っている。裃後見が帯を結び直すところは、相撲の巡業で行われる横綱綱締め実演の如し。顔の隅どりも独特で、江戸の暗い小屋で観ると、異形の人物が眼前に屹立しているように思えただろう。馬に乗った退場も祝祭気分を盛り上げる。笑也の曽我十郎は、ベルトコンベアで上手から登場し、すぐにまたコンベアで退場(笑)前に松緑の矢の根では曽我十郎は藤十郎。まるで置物のようであったが。

ここで30分の幕間。昼の部の終了が早く、夜の部の開演が普段より若干遅いのは、海老蔵が息子を迎えに家に帰る時間を見込んでいるからかな(笑)

三階花篭で「花車膳」で昼飯。紅白の膾が入っていたのは「矢の根」のお正月趣向を反映したのかな。

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次は、河竹黙阿弥作「盲長屋梅加賀鳶」。所謂「加賀鳶(かがとび)」。 冒頭の「勢揃い」、花道に鳶の男伊達が居並んでの「つらねの台詞」は誠に壮観。ただ鳶が出て来るのは最初だけで、その後の筋にはまったく関係無いという、良い所だけ取る実に歌舞伎らしい演出。通しで出すと、本当は色々と筋があるらしいが。

海老蔵の竹垣道玄は初役。眼光ギョロリと鋭いが、愛嬌も軽妙な所もあって、憎めない小悪党として不思議な存在感を持って成立している。松蔵にやり込められるところも面白い。笑三郎の女房おせつは道玄のDVに難儀する薄倖で善良な女の哀れな風情が心に残る。

日蔭町松蔵の中車は堂に入ったもの。世話物は、演技の引き出しに既に色々あるからある程度大丈夫なのだろう。もっとも蓄積した世界は違うから、舞踊や時代物は難しいだろうが。

そしてこの狂言は、「二代目 市川齋入襲名披露」。右之助改め齊入市川齋入は婆さんだけが持ち役かと思っていたが、女按摩お兼は、はすっぱなりに妙な色気があってきちんと成立している。さすが女形の技ですな。

20分の幕間で舞台には所作台が敷かれ、最後は海老蔵の「連獅子」。 加賀鳶に続いて出ずっぱり。花道からの登場する親獅子は、大きく豪快。踏みならす足音も豪快で舞台に鮮やかに映える。巳之助は踊りが上手だが、時として三津五郎の面影が見えるような。やはり親子だから似ている部分があるのだなあ。

この後、夜の部までちょっと休憩があるが、海老蔵は、夜の部も主演で大奮闘。演目が決まるのは相当前だから、海老蔵もある程度の覚悟はしていたかもしれないが、まさか息子が初宙乗りをする公演直前に、最愛の奥さんが旅立つとは思っていなかっただろう。 それでもなお劇場の幕は上がる。歌舞伎役者というのは厳しい稼業である。


「新橋鶴八」訪問。
木曜の夜は「新橋鶴八」。夕方に電話するとお弟子さんが出て「大丈夫です。ご用意できます」と。

入店するとまだカウンタは空いている。最近、カウンタ一番奥は空いており、奥から二番目に通される事が多い。いつもトグロを巻いていた主が居なくなったからなあ(笑) 居なくなってみると、あの一番奥の席前は電話があり、店からもつけ台に出し辛いし、落ち着くけれどもあんまり良い場所じゃなかった(笑) もちろん、二人連れなら一番奥から詰めて、間に置けばよい訳であるが。

菊正の冷酒を貰い、お通しは蛤の柱ヅケ。いつもながらしみじみ旨い。親方の手が空いていると、お通しをつまみ冷酒を一口飲んでいる間に、白身が切られてくる。夏場の白身はカレイ。分厚い身を豪快に切り、夏場らしい爽やかな脂と旨味。

まだ立て込む前なので、親方や女将さんと雑談。九州の豪雨は局地的だったからか、熊本からは築地に魚が入っていた由。豊洲移転については「決まっちゃいましたからね」と。ただ大きな物量扱う卸しは別として、鮨屋や小体な店相手の仲卸は築地に戻って来て貰いたいと皆思ってますよと石丸親方。まあでも戻ってくるまで店やってるか分からないけど、と笑う。

夏休みはどうするんですかと聞かれてお盆休みの話。「新橋鶴八」は、11日から17日までお休みで、確か18日は営業だったかな。9月にもお休みを取るとの事。日程の話になると、親方が指示せずとも電話前で注文を書き留める役のバイトの女性が手を伸ばし、さっと柱のカレンダーをめくって見せてくれるのは実に気が利いていると感心。まあ石丸親方の教育も効いているのだろう(笑)。

次のつまみは塩蒸し。房総産、分厚い身で滋味深く香り良し。アジは軽く酢を潜らせる。身が厚くて旨味がありますよと。漬け込みのハマグリもつまみで。これも定番だが実に美味し。

白身を切りながら「なんで最近は熟成、熟成と云うんですかね。そんなの旨いかなあ」と石丸親方。白身などは身肉の蛋白質が分解して旨味の元のイノシン酸を生成するのだと聞いたことがある。ただこの店で、活かった分厚い身を、甘ったるい煮切りではなくスッキリした醤油で食する刺身の旨さ感じると、確かに熟成にあまり拘る必要もないよなと思うのだった。ただ、海で釣った直後のヒラメを刺身で食して旨い訳はない。おそらく生産者から卸を経る流通の中で、どれくらいの時間で口に入っているかも影響あるのだろう。ここの店の白身はいつもしっかりした旨味があって感心する。

ゆっくりやって頂いていいんですよ、と言われたが、まあ何時ものペース。適当な所でお茶を頼んで握りに。まず中トロ2。小肌はまだ片身づけの分厚いもの。この店の仕事独特、ネットリとした旨味あり。新子を使うのは8月になって2枚づけくらいになってからかな、とのこと。例年だいたいそうだ。確かに、ここの店の締め仕事には金魚みたいな新子は合わない。

アナゴもトロトロ、煮詰めとの相性も素晴らしい。最後はこれまたここの定番、カンピョウ巻を貰って〆。何度来てもまったく飽きない江戸前の仕事だ。



「新ばし 笹田」訪問。
水曜の夜は「新ばし 笹田」。 実に久しぶりに訪問。今週は夜の予定が空いていたので、「與兵衛」「しみづ」「笹田」と御無沙汰している店を連投で訪問している。

入店して笹田氏と女将さんに「どうも御無沙汰!」と挨拶。カウンタも満席、個室も2つとも客が入るようだ。商売繁盛ですなあ。

お弟子さんの「海老蔵」と「松山ケンイチ」は両方とも元気そう。4月に更にもう一人若いのが入って調理場は4名体制に。新人も真面目そうで頑張っている。お弟子さんたちが、真面目な笹田親方の教えを受けて競い合うように切磋琢磨している様子は、見ていて気持ちがよい。

最初のお酒は「磯自慢特別本醸造」。雑味はなく軽やかでごく仄かな酸味を感じる癖の無い酒。

料理はいつも通りおまかせで。最初は小さな器で供される冷しとろろ。じゅんさいとキュウリが食感のアクセントに。出汁の味が効いて実に旨い。

二品目は、穴子八幡巻。 ありきたりの先付けとして何の味もしない一品を供する店も多いが、この店のものは、牛蒡の野趣溢れる香りと、炙った香ばしいアナゴの皮目の脂がしっかりと自己主張する。

鱧の焼き霜。皮目を炙る寸前に笹田氏自ら骨切りを。淡路島産。今年初めて食した鱧。ふっくらした身には鱧にしかない微妙な旨味あり。塩か梅肉で。

忙しく働くお弟子さん達はしかし目配りよく、お酒が切れると、お替りは如何致しましょうかとメニューを差し出す。笹田氏がバットに入れた生の鮎を見せてくれ、今日は広島と島根が入ってますが、一匹ずつ食べ比べてみますかと。勿論、その提案に乗っかる(笑)

二杯目の冷酒は「松の司純米吟醸」。こちらは吟醸香があって、ふくよかな甘味がすっと爽やかな飲み口に変わる。三杯目もこちらで。

伏見唐辛子の煮物はじゃこを合わせて。出汁を含んだ繊維が舌の上でホロリと崩れ、箸休めにもちょうど良い。

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次に供されたのは、アワビの唐揚げ。葛を打ってただ素揚げしただけと去年も聞いたが、寿司種の塩蒸しよりも更に香ばしく、旨味が内部に凝縮されている絶品。この店ではそれほど揚げ物は供さないのだが、しっかりした料理人が揚げるとアワビがこれほど旨くなるのかと感嘆する。 いろんな料理があるものだなあ。

定番の壬生菜と油揚げの煮物も、お惣菜のようで実は幾つも手が混んだブロの仕事。しかしどこか懐かしくほっとする味に仕上げるのが技なのだろう。

次はお造り。シマアジは高知産、腹身の部分、プルンとした天然物独特の舌触り。タイは愛媛。上品な旨味あり。ネットリしたアオリイカには皮目に細かく包丁が入る。ポーションは少なめだが、下手な寿司屋では太刀打ちできない質の良い物。寿司種に拘らず、その日良い物だけを数種だけ引けば良いというアドバンテージはあるだろうけれども。

お椀はハモ。これも昨シーズン食したが、新玉ねぎ、九条ネギを添えたしゃぶしゃぶ風。玉ねぎの仄かな甘味が意外に鱧とよく合う。柚子胡椒はお好みでと言われて途中で入れてみたが、微妙な甘味が飛んでしまって、これは使わないほうが正解だったかもしれない。

笹田氏によると、訪問した昨日6月28日は、以前の場所、尾坪ビルで最初に「笹田」として開店した記念日なんだとか。開店にこぎつけるまでドタバタしたので日付は記憶に残っていたが、当日の朝突然思い出したと。 女将さんのほうは言われて思い出した由。今の場所での開店記念日は確か12月で馴染み客から毎年花が贈られているが。

過去ログを遡るに、私が最初に前の場所にあった店を訪問したのが開店から間もない2005年の10月。そもそも「しみづ」に教えてもらって訪問したのだが、今でも清水親方夫妻は月に一回程度は来店するとか。今日で丸12年経って明日から13年目に突入。そんな日に予約入れたのも何かの縁か(笑)

昔の店は狭かったよねえと女将さんとも雑談。トイレも店の外だったし、お酒の冷蔵庫も店内ではなく外にあったものなあ。実に懐かしい。

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そうするうちに、鮎が焼きあがってくる。広島は太田川、島根が高津川だったかな。じっくりと焼いてあるので頭からバリバリ行けますと。鮎の骨を抜く技なんて読んだ事あるけれども、こんな風に焼いてくれれば手間いらず。島根産のほうが鮎独特の香りが強い気がするが、身肉のふっくらした旨味は広島産のほうがあるか。今年初の鮎。こんなに旨いのを食したら、もう要らないかな。

煮物はタコと石川芋の炊合せ冷製。最後は、炊飯土釜で炊いた炊き立ての艶々のご飯に、ちりめん山椒、お新香、わさび漬けに赤出汁。炊き立てのご飯を供する店はいくらもあるけれど、ここよりも旨いご飯にはあまり出くわした事がない。お代わりにはお焦げも添えてもらって。これまた香ばしくも素晴らしい。

最後は冷製の白玉ぜんざい。これまたくどい甘味ではなく、酒飲みでも旨く食せる上品な甘味。煎茶も爽やか、

いや~、どれも素晴らしかった。一品一品に笹田氏自身の真面目で丁寧な技が光る、実に誠実な味。何十人も働いている大店では決して出会えない料理をカウンタで食せる幸せを堪能した。

ご夫妻の見送りを受け、近所でタクシー拾って帰宅。


「新ばし しみづ」訪問。
火曜日は会社帰りに「新ばし しみづ」に。実に久しぶり。何度か電話したのだが、やはり当日では席が取れない。現在は手が足りないので昼の営業も土日と河岸が休みの水曜だけなのかな。

6時ちょっと前であったが既に先客二組。久々にカウンタに座って、まずお酒を注文。お通しはシラスおろし。お酒はいつもは常温だがそろそろ暑くなってきたので冷酒を。常温と燗酒は「白鷹」だが、冷酒の銘柄は伏見の「まつもと」。爽やかな飲み口。

本店、分店も行ってますかと清水親方に問われたが、分店は当日では予約が入らない時も多いし、行くと大常連O氏が何時もトグロ巻いているからねえ。清水親方は、「Oさんの顛末聞きましたか?」と笑う。直後から分店で聞きました(笑)

特に注文せずともいつも通りつまみから出て来る。

最初はマコカレイ。軽い夏の脂。ネットリしたアオリイカは細切りにして。大きなタコは歯応えがあるが、香り高く旨味が身肉から沁み出てくる。カツオは辛子醤油で。だんだんと旨味が濃くなってきた。塩蒸しは海の滋味に溢れ旨味十分。

シャコは卵ありと無しと。アジは軽く〆てあると思うが、分厚くネットリした旨味。イサキも刺身で。ここでイサキが出るのは珍しい。初夏の魚。皮目に旨味が凝縮している。シマアジも一切れ。プリンとした天然の身。

貝類は、舞鶴のトリ貝、赤貝ヒモ、ハマグリ。今年のトリ貝は出始めから不漁と聞いたが、さすがに舞鶴のものは比較的安定している。貝類は餌をやらないから養殖とは言わないかもしれないが、海の底を入れ変えたり種貝を撒いたりして管理している産地。

ウ二は、青森と九州を食べ比べ。九州の赤ウニは脂に頼らない旨味が濃い。この辺りでお茶を貰って握りに。 すっかりお酒が弱くなりました(笑)

握りは何時も通り。マグロはシットリした肉質。きめ細かい脂が入った部位。コハダは天草だと云うが、片身づけ分厚い身肉。脂も乗ってネットリした旨味。新子だとここの店のドッシリした酢飯に吹き飛ばされてしまうだろう。やはり分厚く脂の乗ったコハダでないと。アナゴは塩とツメで1貫ずつ。カンピョウを半分貰っておしまい。

久々の訪問だが、江戸前の粋としっかりした仕事が確立した、何時も変わらぬ充実ぶり。素晴らしかった。仕事の会食や会社の付き合いをもっと減らして、また通わなくては。ただちょっと早目に予約しないと席が確保できないんだよねえ。先週電話した際も、火曜日ならまだガラガラですよと言っていたが今日入店してみると、6時には満席だ。

女将さんの見送りを受けて「P.M.9」に。今日は空いている。バーテンダーM氏とあれこれ雑談しながらまずドライ・マティーニをゆるゆると一杯。ビロードのような酔いが回ってくる。

かつての「しみづ最多来店記録保持者」F氏は最近めっきり回数が減ったのだが、2週間ほど前に5日連続で来店したとか。全盛期を思わせる復活ぶり(笑)まあしかし、続かないんだよねえ。

店の常連にも移り変わりあり、ぷっつりと来なくなったお客さんもいるとか。考えてみれば私も、昔は移転前の「さわ田」や「あら輝」はしばらく足繁く通っていたが、随分前に予約取らなければいけないのが面倒になって、途中から通わなくなってしまったっけ。河岸変えただけならよいけれども、体調が悪くなって来なくなったとかだと心配だよね。

その後、日本のシングルモルトとアイラ島のシングルモルトを1杯ずつ。隣の客は「しみづ」の入店待ち。ほどなく女将さんが「空きました」と呼びに来た。彼らが出たタイミングで私も帰宅することに。烏森神社は夏の例祭。茅の輪を潜ってお参りをしてから帰宅。

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